事務部時代(2009年~) 校了

事務部時代(2009年~)

1.捨てる神あれば、拾う神あり
システム部では、完全にH部長のメンツをつぶしてしまい、干されてしまいます。
会社に行っても、まったく仕事はありません。唯一残っていたのは、中途採用された担当者にはできない、基幹システムと会計経理システムのインターフェースを作る仕事です。
それ以外に新しく発生する、前向きの案件は、ほとんどが中途採用された新しい担当者に割り当てられていきます。
 
一方で、会社の中には、せっかく育てた人材なんだから、私をなんとかしたいなとの考えを持ってもらえる方もおり、折に触れて声をかけてもらっていました。
そのような中で、たまたま、事務部のメンバーの2人が、大きな病気になってしまいポストに空きが出ます。
こうして、2009年10月にシステム部から事務部に異動になります。
 
なんといっても、システム部時代にいちばんショックだったのは、それまで額面で70万円ほどもらっていたボーナスが、H部長の評価ひとつで、いきなり30万円代まで減ってしまったことです。
日本橋リースの人事評価制度の欠点というのは、結局、人事部そのものに充分な人の手当ができておらず、社員の評価をきちっとできていないことです。
そのため、各部門の部長の好みだけで、その人の評価が決まってしまい、その人が会社の中でどのような役割を果たしているのかという評価もできていません。
一方で、人事部のデータベースもアップデートができていないため、退職をするときまでマイナス情報が人事部のデータベースに残り続けてしまうという問題もあります。
 
結局、当社も含めてですが、上司に気に入られるかどうかだけですべてが決まってしまう日本の人事システムに根本的な問題があります。
そのシステムから逃げ出した人達が、韓国や中国に渡って、日本の技術を現地の人達に教育して、人を育てて、日本に仕返ししているという、ほんとおかしな状況になっています。
すべての韓国、中国、台湾の企業がうまく対応できているとは思いませんが、「鴻海精密工業の技術者は、もともと日本企業にいた優秀な技術者だった。」 という例をみても、日本の各企業を正しく機能させるには、まずは、人事部の担当者が社内をウロウロしながらオタク話をするような、ゆるい雰囲気を作ることから始めたほうが良いかもしれません。
 
一方で、日本橋リースは、まだマシな方なのかもしれません。システム部時代には、他の会社での悲惨な事例を目にしました。
システム部時代に当社に出入りしていた他社のSEさん(本当に優秀な方だった)は、その派遣元の部長の指示で、
 ・ボーナスをもらえない
 ・同僚もひとことも口を聞いてくれない。(すくなくとも部長のいることろでは)
 ・会社を退職するときに送別会も開いてもらえい
といった仕打ちを受けていました。
いったい、その会社の統制はどうなっているんだろう?
そもそも部長がそんなにひどい評価をするのであれば、評価そのものが正しいかどうかを疑う人はいなかったのか?
それほどひどい評価の人を重要取引先とされていた当社に常駐させておいて、大丈夫か?そのことを疑問に思う人が、その会社にひとりもいなかったのか?あるいは、すべてを解ってやっていたのか?

等々、いまでも疑問で一杯です。
それに比べると、ボーナスが半分に減ったくらいで済んだだけ、ましなのかもしれません。

2009年から約10年が経ち、あらためて考えてみると、上にへつらって無難に職務をこなすというのか賢い選択だったのかもしれません。
ただ、それをやってしまうと、人間としての自分にウソをついていることになります。
やっぱり、目の前にシステムで困っている人がいれば、それを助けるのが人としてのあるべき道だと思うし、俺はサラリーマンである前に職業人(プロフェッショナル)でありたいと思っているので、「なにもしない。」という選択肢はありませんでした。きっと、部長に逆らっても、顧客を助けたことは正解だったと思います。

まあ、いずれにしても、システム部をクビになって、あらためて、事務部での仕事に取り組むことになります。

2.保険の担当として(2009年~)
事務部に来て、まず、真っ先に担当したのは保険の仕事です。
前任者2人が病に倒れて、一方、得意としていたシステム開発も封じられてしまいます。システムエンジニアから(自由に使えるデータベースとプログラミング言語)を取り上げてしまえば、ただの無能な人になってしまいます。
まだ、パソコンを取り上げられなかっただけ、ましかもしれません。システム部時代にはH部長からは、度々「パソコンを取り上げるぞ。」と脅されていましたし、実際に本当にひどい会社ではすべてを取り上げて、ひたすらコピー作業をさせるというところもありました。
 
一方、事務部では前任者が急にいなくなったことで、目の前には、引き継ぎなしの仕事が山積みしています。いったい、どうすれば良いのだろうというのが正直なところでした。
ただ、一方で、社会人としての経験は、40歳を目の前にして、十分な実力がついていました。役職は、マネージャーのままですが、とにかく、部長代理になったつもりで、目の前の仕事を必死にこなしていきます。

3.保険という金融商品
保険という金融商品は、なにかうまくいかないことが起きたときに、お金で解決してくれとお願いして、無理やり納得してもらう かなり乱暴な金融商品です。うまくいかなかったこと自体は取り返しがつきません。
また、保険の種類には生命保険と損害保険があります。生命保険は、だいたい、契約を申し込んだ当事者が死んでしまっていることが多いので、淡々と、保険金を支払って、契約終了になることが多いです。
一方、損害保険は、契約先(当社)や、借主(リース物件の使用者)ともピンピンしており、ゴリゴリとしたハードネゴシエーションが続きます。瑕疵担保責任だとか、時効の考え方だとか、民法と保険契約の解釈を巡ってゴリゴリと交渉しながら、システムとまったく違った分野で能力が鍛えられていきます。一方、客先と保険会社との板挟みにあって、保険金を下ろして欲しいのに支払ってもらえなくて謝りに行くこともあり、精神的には、かなりきつい仕事でもありました。保険の仕事をしてみて、よくわかったのは、損害保険会社の年収が高いことを理由です。あの精神的にハードな仕事についていけずに、途中で脱落してしまう人がかなり多数いるのではないでしょうか? 給料の高さにつられて安易に損害保険会社を就職先を選ぶ学生がおりますが、私がもし学生時代に戻っても絶対に就職したくない業界のひとつです。
いまは、保険の交渉事は、事務部ではなく、営業部店の担当業務に変更されています。
 
4.東日本大震災(2011年(一次情報にふれる重要性))
保険の担当として、2年を経過するころです。東日本大震災が発生します。
東日本大震災には本当に驚きました。以前に祖父から関東大震災で半日近く揺れが続いたという話を聞いていたものの、実際に自分が大地震を体験するのは初めてです。
以前のオフィスは、安普請のビルだったので、とにかく揺れ揺れに揺れます。 事務部は6Fにあったのですが、重量500kgくらいの金庫が1mくらい移動してしまいした。挟まれていたら確実に死亡しています。一方、10Fの社長室も、壁にかけてあった絵画が落下したり、調度品が壊れたり等々、大変な被害でした。6階にあった事務部も、天井のパネルが外れて、白い粉がパラパラと落ちてくるといったありさまでした。震災の当日は会社に泊まり、翌日、自宅に帰宅することになります。
自宅に帰ってみて良かったのは、地震が来ても、まず倒壊する心配の無いマンションを買っていたことです。揺れがきても、船に乗っているような揺れはあるものの、建物が壊れる心配はまったくありません。きちっと眠って、翌日仕事に出かけられるという、恵まれた状況でした。

震災のときに、先輩から教えららたのは、一次情報にふれる重要性です。地震が起きたとき、先輩はネットを開いて真っ先に星条旗新聞(STAR AND STRIPE)のホームページを見ています。さすがアメリカだと思ったのは、震災の約10分後には、三沢から偵察機を飛ばして、津波のライブ中継をやっていたことです。おそらく、当時、日本の首相だった菅直人氏より、アメリカのオバマ大統領のほうが先に情報を得ていたのでしょう。
アメリカの底恐ろしさみたいなものを垣間見た気がしました。
一方、私も、なにか大きな事件が起きたときは、星条旗新聞(STAR AND STRIPE)を真っ先にチェックするという習慣もできました。

4.自動車リースの担当として
2014年のことです。ふいに、上司から呼び出しがかかります。「君、新しい仕事をやってみる気はないか?」ということです。いったい何が始まるのだろうと、不安とワクワク感がありました。事務部で5年経過したし、このあたりで、異動があってもおかしくないかなという気もしています。
 
その後の結果は、またしても、驚くべきものでした。
 
約10年近くに渡って、自動車の業務を仕切ってきたHさんが退職するということです。
システム部のときも同じでしたが、退職者の穴を埋める仕事は、必ず俺のところに回ってきます。それだけ、管理部門の仕事であれば、無難になんでもこなせるということなのでしょう。
まあ、プロ野球の世界でいえば 「5対3くらいで2点ビハインドしていて、本格的なリリーフはつぎ込みたくないけど、ゲームは壊さないでね。」というところで投入される、中継ぎ投手のようなものです。
大体、シーズン終了後に、3勝5敗 10ホールドポイント くらいの成績で、年俸2500万円くらいで契約更改される、頼りにならない中継ぎ投手といったところでしょう。
まあ、保険の仕事にひきつづいて、またしても、他の人の後始末かよ? とも思いつつ、また、仕事のあることに感謝もしつつ、仕事の引き継ぎをしていきます。

Hさんの仕事のスタイルにはかなりの問題があって、極力情報を外に出さない方針だったようです。契約書類は自分の秘密のキャビネに隠してあって、その人以外は、誰もどこにあるのか分からない。
営業マンが頭を下げてくれば、契約書のコピーを取らせてあげるけど、それ以外は一切秘密。
というような状態でした。
 
そのような状態のなかで、まず、心がけたのは情報をオープンにするという姿勢です。

・2014年以前は、自動車のリースは契約書をパソコンで電子的に見る事ができませんでした。まずは、パソコンの上で契約書類のイメージを見れるようにしようという作業に取り掛かります。移転先のオフィスに契約書類の保管スペースがなかったこともあり、自動車契約のほとんどすべてを、倉庫会社に送り込み、電子化(スキャン)の作業を依頼します。これで、少なくとも事務部に頭を下げないと契約書を見せてあげないよというような意地悪をしたり、されたりすることはなくなりました。
 
また、以前は日本橋リースは自動車を何台保有しているのかといった情報さえ、正確につかめていなかったものを、国のデータをEXCEL一覧に加工した上で、全社で共有して閲覧できる仕組みもつくりました。
やはり、仕事で心がけているのは、上を見て仕事をするのではなく、みんなに使いやすいと言ってもらえるような、データや事務の仕組みを作るということです。
この点は、システム部時代から一貫して心がけています。

5.日本橋リースをやめない理由(1995年~)
・まあ、会社にはいろいろな人がいるものです。
大学時代、ほぼ無気力人間だった私に、500万円近くの教育費 と 多大な時間をかけて育ててくれた恩があります。私の考えでは、社会全体はギブ&テイクの関係でできているので、最初にテイクしてしまった分ぐらいは、次の人達にギブしていかないとという思いが大きいです。結局、それが自然に拡大していくようになれば、会社はそれに合わせて成長していくということではないでしょうか?

・一方で、最近は会社の中にものごとの本質を理解しようとしない人たちが増えてきているのも気になります。マニュアルにダメと記載されているからダメなんですという論法で人の話を一定の深さをもって聞くことができない人達です。

たしかに、銀行は役所と同じ社会機能を果たす役割があるので、一定のルールで動く必要があります。一方、リース会社では、銀行にできない業務を行っているため、どうしても同じ基準を適用できない場合があることも事実です。また、顧客に合わせて仕事をすることによって、銀行ではないリース会社独自の役割も果たしているということです。

・変な人の居場所のある世界
私自身、サラリーマンになったときは、人とまったく会話もできない、変な奴(というより、気持ち悪い奴)だったと思います。いまでも、自分自身を自宅の洗面所のカガミで見て、ため息しか出てきません。もちろん、自分で自分自身を気持ち悪いと思うことがあるということは、他の人から見たらもっと気持ち悪いんだろうなと思います。
きっと、太宰治人間失格に書かれた「私はその男の写真を三葉みたことがある。」という世界もこんな感じなのかなということです。
 
ただ、そんな奴でも、日本橋リースの社内で飼われていて、いざというときは、ある程度役に立つことがあるということで、かろうじて生きているということです。


6.日本橋リースの弱点(2005年頃~現在まで)
・中期経営計画のバカさ加減
まあ、日本の多くの企業も同じです。当社でも親銀行のやり方に合わせて中期経営計画という3カ年計画を立てます。これは、銀行でも当社でも、学生時代にソ連バンザイ(マルクスーバカ)だった人たちが、社会から完全に引退するまで同じことが続くでしょう。
だいたい、これだけ変化の激しい時代に、いったいどれだけの人たちが、3年後に中期経営計画どおりに「ものごと」が進んでいると思っているのでしょうか?
きっと中期経営計画の作成を指示した経営者も、実際に作成している現場の担当者も、「まあこうなったら良いよね。」くらいの感覚で作っているのではないかと思います。
中期経営計画に具体的な数値項目を入れられないのは、それを入れてしまうと計画を作った経営者と企画担当の社員の責任になってしまうことが大きいと思います。
いっそのこと、いまから3年先なんて誰も予想できないんだから、もっと簡便な計画(項目ごとに、①考えて、②実行してみて、③評価する)というシンプルなサイクルを、半年ごとに計画する仕組みにしたほうが、より生産的なような気がします。
まあそれでも将棋の端歩をついておくように、勝負が入り組んでいないときに、自分が有利になるような仕組みを作っておくことは重要です。

 
・過剰なリスクマネジメント
リース会社ではお金を扱っている以上、リスクマネジメントはやむを得ないのかもしれません。ただ、あまりにも過剰なリスク管理も考えものです。なぜか、ビットコインのように電子的にお金が流出することは無いのに、社内のシェアポイントデータベースに保存してあるウィルスチェック済のファイルも、マウスの左ボタンで開くことができません。いったん、パソコンに保存させてから開くというような作業負担を全社員にお願いするのであれば、ウィルスに感染することを覚悟した上で、セキュリティをゆるくするという考えもあって良いと思います。

・ハンコ多すぎ
日本の会社の悪いクセなのですが、とにかく書類にたくさんハンコがついていれば、その書類は出来が良い書類ということになります。まあ、尖った意見が書かれていない無難な書類ということでもあるのですが、結局、だれが責任者なのかが、書類上からはいまひとつ分からない状態になってしまうのです。
あと、書類のハンコは担当者の判断を誤らせます。xx常務が押しているんだから、絶対に問題のない与信先だ とか 異例扱いの書類だ とか 言われたとおりに処理しないと報復を受けるかもしれないといった先入観が、審査部門や事務部門の判断を鈍らせます。私は水戸黄門症候群と読んでいます。昔、東野英治郎水戸黄門をやっていたときは、印籠を見せても、歯向かってくる骨のある奴がいたのですが、西村晃里見浩太朗と続くにつれて、歯向かう奴は皆無になります。
日本の社会が予定調和で動くことを好む社会に変質してしまったということなのです。
 
ただ、一方で、現実社会は予定調和どおりに進むことはなく、その役員や担当者が会社をやめたあとに、採算に合わない契約だったり、事故が発覚したりとか、問題が発生します。
逆に、偉い人のハンコの押してあるものほど、深さや観点の点から見逃しているポイントがないかどうかを丁寧にチェックして、対処してあげたほうが良いのかもしれません。

・営業事務マニュアルの変更は役員の仕事か?
日本橋リースの営業事務マニュアルは役員の承認を得ないと変更できないことになっています。本来、リースの現場では、結構ギリギリの判断をすることも多く、現場に一番近い人達が、その場で判断することも多いのです。またリースの現場に不慣れな役員が間違えた判断をしてしまうこともあります。結局、現場に一番近い社員が、実態にあった私的なマニュアルを作成し、全社員が見る全社掲示板にほとんど約に立たない無難な営業事務マニュアルが載ることになります。営業事務マニュアルは、誰も見ないまま10年以上放置されたままになったりすることになります。
 
会社を危機に陥れてしまうような与信判断基準のようなもの以外は、権限を現場に下ろしてしまっても良いのではないかと思います。


・人事評価は、あなた自身の評価ではない。
サラリーマンを25年以上やっていると、人事評価でも壁にぶち当たることが多くあります。ボーナスが半減させられたり、同期が全員課長になったのに、自分だけが係長のままというふうになると、全人格を否定されたような気分になってしまう方もいるかと思います。
ただ、会社の評価とは、仕事の能力(その能力でさえなくて、上司に気に入られる力)だったり、失敗しそうなことを何もしないでいた不作為の力であったりして、なにかをやったからマイナス評価をされてしまう人達も多いのです。
まあ、自分が責任を取れるんだったら、あまり、他人の評価なんか気にせずに、好き勝手にやってみても良いと思いますし、絶対にそっちのほうが人生後悔せずに済みます。

パワハラの回避力、上司に嫌われる力
結局、パワハラの回避力 と 避難場所を作っておくことが重要です。
サラリーマン人生は22歳で就職してから65歳まで43年間に渡って、戦わなければいけない長期戦です。その中では、オトコを通して上司とケンカする場合も必ずあります。上司と戦った結果、コピー係になってしまうのは、あまりにももったいなさすぎます。
 
万が一、パワハラにあったとしても、会社の中に避難場所を確保してあれば、そこで、嵐が過ぎるのを待つことができます。まあ、下手にひとりで社外にでて、嵐に立ち向かうより、やり過ごしたほうが良いと判断するのも手ではあります。

・会社を辞める前に考えて欲しいこと。
いちど逃げる人生を選ぶと、一生逃げ続けることになります。いまの仕事が嫌だからやめるといって、何回も転職をする人を見ていると、絶えず、夢を追い続ける人生を送ることになります。それはそれで、うらやましくもあるのですが、人間はまずご飯を食べていくこと と 家族を守ることを優先すべきだと思うのです。
有り余るほど、現金、預金、マンションを持っているのだったら、夢追い人も良いのでしょうが、現実を見据えた対応が必要です。